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「後鼻漏症候群」鼻水が垂れて咳が出る病気について考える。

[2018.01.17]

鼻水が、喉に垂れて痰になってしまうことで咳がでてしまうという病態を「後鼻漏」といいます。これは、様々なデータがありますが咳の原因の半分を占めていることもあると言われています。

 まず、鼻・鼻水はどんな役割をしているのか?について考えてみる必要があります。鼻・鼻水は、人間にとっては最近の空気清浄機付きエアコンの役割を担っています。肺という体の中(エアコンに例えれば、部屋の中に相当します)を快適な温度と湿度に保つために、鼻から入った空気を加温・加湿する役割を担っています。同時に鼻から入ってくる異物を除去する空気清浄機能を備えており、肺の環境は24時間365日綺麗で快適な空気が流れるようにできている素晴らしいエアコンが人間には装備されているのです。そんな「鼻エアコン」ですが、機械のようにフィルター清掃を必要とするのですが、某メーカーのような自動洗浄機能を装備しているためフィルターとなっている粘膜(これが異物を除去しながら温度・湿度の管理を行うという優れもの)を定期的に洗い流して機能の低下を起こさないようにしています。この洗浄液が鼻水と考えられます。この鼻水は1日2Lも作られており、ほとんどが喉から胃に流れて胃酸とともに異物を除去するシステムを構築しています。

 では、風邪をひいたときの鼻水はどういうことが起きているのでしょうか?

これは、異物が大量になりフィルターが急速に目詰まりした状態で、自動洗浄機能がフルに働いている状態と同じです。フィルターの汚れ方により洗浄液のみでは処理できず、粘膜というフィルターごと交換しないといけないようなことが生じてしまうのが風邪を引いたときのドロッとした鼻水です。フィルター交換も、洗浄液もすべて胃のほうに流れて胃酸で処理するというシステムは同じですので、フィルターごと喉に流れるのですが、肺にいく通路と胃に向かう通路の分岐点(ここが喉になります)が狭くなっているため、ドロッとした鼻水が溜まってしまい痰となってしまいます。この痰が肺の通路側に入りそうになると咳で押し返し肺という部屋を守ろうとするため、咳がひどくなると考えられています。これが後鼻漏のメカニズムなのであり、体にとっては必要なシステムであることが理解できます。蛇足になりますが、中耳炎を起こすときはこのひどく汚れたフィルター(粘液)が鼻に残ったままになり、その一部が耳管という通路から耳に流れこんでしまっている状態です。これは、生体にとって不利益ばかりのように感じますが、鼻エアコンのフィルター交換がうまくいっていないことを生体に伝えるためのアラーム機能と考えられており、不調を感じることでエアコンの修理が必要であることを生体に知らせてくれています。そのため、成人であれば鼻をかむことで汚れたフィルターを鼻の穴から出してフィルター交換を済ませてくれます。しかし、鼻がかめない幼児の場合には中耳炎というアラームがずっとなり続けるため体調不良が続いてしまい、改善がなければ空気清浄機能の悪化から気管支炎を併発したり、アラーム機能の破綻(鼓膜穿孔・乳様突起炎など)を生じることがあります。

 後鼻漏の治療は、フィルターを綺麗にする方法を考えればよいのですが、抗生剤を飲むということはフィルターを掃除機で吸って綺麗にしているような状態です。汚い空気を外からなくすことでフィルターの目詰まりを治し交換の必要を無くさせるという方法ですが、これが本当に必要であるかどうかは常に考えなければなりません(抗生剤を飲めばほとんどの場合よくなるのですが、フィルターの交換をうまくやればわざわざ掃除機で吸わなくても良い場合もあります)。もう一つは、去痰剤(ムコダインというお薬など)はドロッとした粘膜をさらさらにして喉でつっかからないようにすることが目的でフィルター交換をスムーズにいかせるようにするものです。一見理想的な治療にみえますが、やはり効果が限定的で、場合によっては汚いフィルターが喉から肺に入ってしまい酷い咳になってしまったりすることもあるため、去痰剤単独では回復が遅れることが多いと言えます。

 当院では、以下の場合には抗生剤(フィルター掃除)など緊急的な処置を必要としておりますが、そうでない場合はまずフィルター清掃のような緊急避難的な治療は行わない方針にしています。

後鼻漏症候群で抗生剤を使用する可能性がある場合

  1. 咳がひどく、肺への痰の落下が多くなっている場合
  2. 副鼻腔炎(蓄膿)にともなう症状(頭痛や発熱)が続き、鼻の中でエアコン機能がすでに破綻しているとき(臭いや味を感じなくなってきます)
  3. 軽微な症状ではあるが、慢性化して様々な治療で改善がないとき

としています。これは、当院の独自の見解ではありますが急性副鼻腔炎のガイドラインをもとに作成しており、標準的な考え方ではあります。

上記以外の場合には、ムコダインなどの去痰剤を投与しながら、飲水を多くしてもらいます。このときには、飲むヨーグルトやカルピスのような少し粘性のある飲み物を飲むことで喉に溜まった痰も一緒に胃の中に流せるとよいことをお伝えしています。また、乳児でなればハチミツを含む温かい飲み物が最適であるといえます。乳幼児は破傷風の危険があるため、ハチミツはすすめておりませんが、1歳以降で4種混合ワクチンの追加が終えていれば、安全に摂取が可能でハチミツには抗炎症効果と咳を鎮める効果、そして粘性があるため溜まった痰を胃の中に流してくれる効果とすべてを兼ね備えています。そして、すべての治療の中で唯一咳を鎮める科学的データがある方法であるので、決して民間療法ではなくとてもよい治療法と考えられています。さらに鼻をよくかむもしくは鼻を吸ってあげることでフィルターの交換を促すようにして改善に近づけるようお話しています。もちろん、漢方薬もご案内することがあり、抗生剤に変わる治療となりえますが、飲みにくさや即効性に欠けることから継続が難しい方も多い印象です。

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